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無常の長調 [音楽雑感]

BBCの番組「The Genius of Mozart 」の一場面です。



解説しているのは、指揮者のチャールズ・ヘイズルウッドさんです。
「表面的には、とても明るく前向きで、ハ長調の愛らしく開放的な調で書かれています。
しかしこれは、彼の父親が亡くなった頃に書かれた作品です。
息子は悲しいのです。
多分、こんなに悲しい長調の曲は他にはないでしょう。

父親が亡くなった時のこの曲は魅力に溢れ、暖かい。
まるで彼はこう言っているかのようです。”お父さんが死んだんだよ。でも僕は大丈夫さ”
でも曲を深く良く知ると、彼が少しも大丈夫なんかではないことがわかります。」



晩年のモーツァルトの、明るく優しい長調の作品が悲しく聴こえるのは何故だろう。

「敢えて表現しないことによる表現。

これこそ、その後のロマン派の時代にも達成し得なかった、そしてモーツァルトだけが手に入れた(しかし、手に入れたと同時に当人が死んでしまい封印されてしまった)孤高の音楽語法なのかも知れない。

なぜなら…
人は、本当に悲しいとき、涙を流して泣いたりしない。
ふと、力なく微笑むのだ。」・・・吉松隆



私の大好きな「アヴェ・ヴェルム・コルプス」や「クラリネット五重奏曲」
そこでは、悲しみは疾走せず、息もせず、ただ優しく微笑む・・・






そして、この人の演奏も。


Glenn Gould "Piano Concerto No.24"

この演奏は忘れがたい。
何とも言えない、たまらない思いがこみ上げてきて、聴かなければよかった、とも思う。
Gouldはモーツァルトを嫌っていたけれど、この二人はとても良く似ている。
と思う。













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コメント 23

gezkaz

glennmieさん、こんにちはーー。

いつもいろんなことを教えてくださってありがとうございます。
なんだか、ちょっとモーツァルトが好きになれそうな予感がしてきましたよ!!

glennmieさんが、新しいドアを開けてくれたみたい。
ちょっと楽しみになってきました、モーツァルト……。
by gezkaz (2010-10-28 04:30) 

glennmie

gezkazさん、コメントありがとうございます。

私が大・大尊敬するMineosaurusさんのブログの記事。

http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2010-10-23-mozart
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2010-10-15-mozart
(勝手に貼っちゃった・・・)

これ、是非読んでみてください!
この記事を書く直接の原因になりました。
私は浅いですね~。




by glennmie (2010-10-28 10:17) 

glennmie

takemoviesさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-10-28 10:28) 

glennmie

xml_xslさん、nice!ありがとうございます。


by glennmie (2010-10-28 10:29) 

glennmie

dorobouhigeさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-28 15:49) 

macha

そういえば、モーツァルトの何とか長調って悲しげな曲がいくつかありますね。
晩年って言っても彼の場合は30くらいだっりするから驚きですね。
by macha (2010-10-29 01:35) 

glennmie

machaさん、コメントありがとうございます。

ほんとですね~。
たった35年の命なんて、はかないですよね。
30代で亡くなった作曲家が実に多いんですね。
シューベルトなんて、たった31歳ですよ。

by glennmie (2010-10-29 02:46) 

glennmie

tamanossimoさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-10-29 02:47) 

glennmie

bee-15さん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-10-29 09:05) 

glennmie

まるさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-29 10:21) 

glennmie

c_yuhkiさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-10-29 13:05) 

arata

glennmie 様
敢て、表現しない事に依る表現…深い言葉ですね。この事は、18世紀末期から19世紀初頭に掛けての天才的音楽家に共通している事と思われます。Schubert やChopin 、Bellini にもそういう特徴があると感じます。彼等の作品を感情過多で演奏すると、音楽が要求している表現から、最も遠い演奏になります。今、上に挙げた音楽家は、Mozart の影響を受けていますね。天才の近く(場所ではなく時間)に存在していた音楽家への Mozart の影響の強さに驚くばかりです。
arata
by arata (2010-10-29 20:08) 

Mineosaurus

音楽は微笑んでいます。でも、その人なつこい瞳には涙が溢れています。それは人間であり、誰もが巧まずして生むことができる表情です。
モーツアルトの音楽は生き様そのものが作為なく後戻りすることなく生まれているようです。よくボクは降りてきた音楽という言い方をしますが、”作った”という作為も継ぎ目も見えない人の形をした音楽。そういう書き方ができた音楽家はモーツァルトが最初で最後のような気がします。
奥歯を噛みしめながら微笑んでいる硬い笑みは音楽にするとこんな聞え方をするのかも知れません。
by Mineosaurus (2010-10-29 22:02) 

glennmie

arataさん、どうもありがとうございます。

深い言葉・・・それだけ音楽の世界は深いということなんですね。
若くしてその領域に到達した音楽家たちって、私から見るとモンスターですね。
だから天才なのでしょうけれど。
まさに、天からの才能なんですね~。
その片鱗をを理解するまでに寿命がきてしまいそうです。
by glennmie (2010-10-29 22:04) 

glennmie

Mineosaurusさん、どうもありがとうございます。

モーツァルトは、「神様のフルート」といわれてますね。
神様の音楽を奏でる楽器だったと・・・・
彼の音楽は、まさにミューズが降りてきたそのままの姿なのかもしれませんね。
だとするとなおさら、彼の悲しみがとてもとても切ないですね。

こんな表情の人がもし目の前にいたら、やりきれなくてたまらなくなります。
by glennmie (2010-10-29 22:20) 

glennmie

galapagosさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-10-29 22:24) 

FN

glennmie様、

取りあげてくださったモーツァルトのコンチェルト24番、
ほんとうにほんとうによい曲ですね。
私はグールドの何かを訴えるような、しかし明るく優雅で素直(すなお)!?なピアノ・ソロに管弦楽が重なってゆったりと流れて行くメロディを聴いたときはもう心が洗われる思いでいっぱいでした。さっきから何度も聴いてます。

...というのも私はグールドを本格的にまとまって聴いたことがないので、いわゆる(彼は特有の癖があるとか)世上の固定観念があって、こんなにも美しく(私のような素人にも分かりよい)正統的なピアノを弾いている...とは思ってもなかったのです。

Glenn Gould "Piano Concerto No.24"
【この演奏は忘れがたい。
何とも言えない、たまらない思いがこみ上げてきて、聴かなければよかった、とも思う。Gouldはモーツァルトを嫌っていたけれど、この二人はとても良く似ている。
と思う。】

このglennmieさんの実に印象的な紹介・解説もあいまって、
どうしても全曲を聴きたくなり、先ほどアマゾンでCDを注文しました。
(もちろんグールドのCBS盤でシェーンベルクの協奏曲と一緒のCDです。
ただ値段が直輸入新品・送料無料で690円なのが気になります~安いのが)

今回は素晴らしい曲を教えてくださり、ほんとうにありがとうございました。

by FN (2010-10-30 00:31) 

glennmie

FNさん、コメントありがとうございます。

これ、Gouldがまだ20代の頃の録音なんですね。
彼が20代の頃はよくピアノ・コンチェルトを録音していて、そのどれもがとても美しくて、そう、FNさんが仰るとおり素直で純粋で、ひたむきな演奏に心を打たれます。(ベートーヴェンのコンチェルトもお勧めですよ!)
こんなに繊細で純粋な人がこの世で生きていくのは随分辛かったかな・・・と思ってしまいます。

人と変わった特有のスタイルや、個性的な解釈でキワモノの様に思われがちですが、これほど純粋に音楽に没頭し、音楽を愛した人はそうはいないでしょう。
自分の信じる道を貫いた彼を、私は心から尊敬しています。

690円ですか~・・・複雑な気分になりますね^^
でも、気軽に名盤が手に入るのはいいことですよね。
第1楽章のカデンツは彼のオリジナルで、とても素晴らしいですよ。
是非、またご感想をきかせてください。
by glennmie (2010-10-30 01:48) 

glennmie

よってさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-31 02:10) 

glennmie

アヨアン・イゴカーさん、nice!ありがとうございます。



by glennmie (2010-10-31 19:07) 

glennmie

eternityさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-10-31 19:07) 

FN

glennmie様、
いつもご親切ご丁重なる返答をくださり、
ほんとうにありがとうございます。

昨日、アマゾンから上記のCDが届きました。
一聴、もう素晴らしい曲であり、演奏でした。

glennmieさんのおっしゃるとおり、若い頃のグールドの純粋でひたむきなピアノの音、明るくのびやかな中にも何か遠い日の夢でも語るような、喜びと悲しみ、あきらめや希望、そんないろいろな思いが胸にこみあげてくるような、ほんとうに美しい演奏だと思いました。

私は第二楽章のそれが一番好きですが、今度は他の吹き込み盤も聴き比べた後で、教えてくださった【第1楽章のカデンツは彼のオリジナルで、・・・】を研究してみますね。ありがとうございました。

ところで私が「690円が気になる」と書いたのは直截の値段のことではなく、「もし偽グールドだったらどうしょうか」等の意味でした。でもさすがGさんです。「名盤普及のためには良いことだ」と。

実は私がまだ若い頃、フォークやカントリー、ロックにこって、いろんなLPレコードを集めてました。当時はLP全盛時代で、大きいレコード会社(メジャー・レーベル)はみなそれぞれ傘下に、例えばコロムビアはハーモニー、ビクターはキャムデン...というような廉価盤専門のレーベルをもってました。

それらレコードの値段は半額ぐらいでしたが、その内容はヒットしてない曲だけ集めたり、古い録音を電気ステレオ(エコーがついてるだけ)にしてたり、ひどいのになるとフォーク盤の中にハワイアン・バンドの演奏が入っていたり、もっとすごいのは24曲LP!という宣伝文句で、通常両面12曲収録のLPを、各曲の伴奏や2番目歌詞をちょん切って巧みに編集し、24曲入りにしてるのです。

これらでだいぶだまされましたが、今考えると楽しい思い出です。そのようなことで→安い→廉価盤→ほんものグールドか→または短縮版か?とかそんな不安が一瞬頭をよぎったのです。

でもglennmieさん紹介のものと同じ曲だったので安心しました。
それでは本日はこれにて失礼します。
このたびはほんとうにありがとうございました。

by FN (2010-11-03 22:08) 

glennmie

FNさん、楽しいコメントありがとうございます!

LPレコードのお話、へぇ~~!!っと興味津々で読ませていただきました。
大手レーベルが自ら廉価版専門のレーベルを持っていたんですか!
面白いですねー。
スタンウェイのエセックス・ピアノみたいなものなのかしら・・・・


Gouldは遺言を残していて、今でも彼のDiscの売り上げの何パーセントかが、カナダの動物愛護団体に寄付されることになっているんです。
彼らしいでしょ?
彼のレコード・セールスがあがると、それだけ沢山の犬や猫の命が助かるんです。

彼のコンチェルト、本当に素晴らしいですよね。
モーツァルトは当時自分で曲の弾き振りをしていたから、ピアノ・パートの楽譜は手薄のものが多いらしいです。
この24番もカデンツが残っていない。
名曲なだけに、多くのバージョンがありますよ。
ベートーヴェンやブゾーニやブラームス、エドウィン・フィッシャーなどなど・・・
是非是非、聴き比べてみてください。

FNさん、こちらこそ、どうもありがとうございました!
by glennmie (2010-11-03 23:16) 

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