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Miracle of "32" [Gould]

今年も残すところ、あと数日となりました。
いろいろな出来事でめまぐるしかった一年が過ぎようとしています。
そんな今年のしめくくりも、やはりGouldの記事で。






まずはこの曲を。




ブラボー!![ぴかぴか(新しい)]





ゴールドベルク変奏曲で華々しくメジャーデビューしたGouldのセカンドアルバム。
"32"小節のアリアから始まり30の変奏曲を持つ、"32"曲から成るBachの変奏曲の次に録音されたのは、ベートーヴェンの"32"番のソナタの2楽章の変奏曲でした。

ゴールドベルクで衝撃のデビューを飾った後、この録音で彼は批評家達にボロボロに叩かれた。
「子供っぽく」「未熟で」「表面をなぞっているだけ」で「曲の構造を理解していないで」「騒々しく」「受け入れ難い」のだそうです。
かわいそうに天国の後、地獄を見てしまったんですねぇ・・・


私の持っているCDの解説にも、
「ピアノ作品の中でも特に神聖な作品として、ベテランのピアニストたちでさえ十分に成熟したという確信を得るまではなかなか手を付けないソナタである。」
と書いてあります。

そうなのかい。
年齢やキャリアが関係あるのかい。


初版のLPレコードには、Gould自身の解説が載っています。
その中では当時23歳のGouldが、そうした重鎮たちの解釈に「ナンセンス!」と、
その毒舌炸裂ぶりが面白いです。
「作曲家の音楽歴を年代で区切り、かなり気まぐれに選んだ時期別の特徴を押し付けることは、音楽人類学のお楽しみの一つであるようだ。
ほとんど切れ目なく生産にわたり作曲し続けた創作家の作品を、音楽鑑賞研究家は「誰それのなになに時代」と時代区分して考える。
彼らは、一人の芸術家による専門的概念の段階的発達を評価するという、厳しい割には地味な仕事に直面すると、突然に、音楽外のあいまいな感覚領域の預言者のような姿を見せる。
ベートーヴェンのいわゆる晩年の作品は、そうした音楽占い師にとって格別の魅力を持っているようだ。
そこではそれ以前の作品よりいっそう楽に遺言にあたるメッセージが読み取れると思うからである。
聴力障害によって内省に慰めを求めざるを得なくなったし、作品的に比較的不毛な時期が続いていた。
その結果、後年の作品は耳の不自由な男のあり得ないはずの計算違いの産物として、あるいは、それまでの全業績を超える創造力、実に音楽の機能、性格そのものを超える創造力の喜ばしい回復として説明されてきた。」


一方Gouldは、このソナタを「無防備な自発性と客観的統制力の調和を示唆している」曲とみています。
しかもその特質は、ベートーヴェンが生涯求め続けてきたものであるのだ、と。
その前触れは交響曲第7番、ソナタOp.101の動機の圧縮に、交響曲第8番の鈍い和声感覚部分に、ソナタOp.81aの顕著な力感的部分に見ることができる。
そして最後の3つのソナタも、そのあとに続く力強い四重奏曲の先触れなのである、と結論しています。



ふ~~~ん・・・






さて、
ここからは下世話なお話。

Gouldが、Bachの”32”の次にベートーヴェンの”32”を持ってきたのは偶然ですか?
”32”という数はなんでしょう・・・

原子番号32番の元素はゲルマニウム
酸素分子 O2 の分子量は約32
選抜高校野球大会の出場校は通常32校
華氏温度で 32°F は水の氷点
チェスの駒の数
また黒と白のマス目はそれぞれ32個
皇室の十六弁八重表菊紋の花弁の数
成人の歯の本数
1998年のフランス大会以後のワールドカップサッカーの本大会の出場枠
バスケットボール (NBA) のマジック・ジョンソンの背番号
.....



Gouldに関して言えば
19”32”年に生まれ
生まれ育った実家の番地が”32”
そして、”32”歳の時にコンサート活動をドロップアウト。



ふ~~~ん・・・









2014年
Gouldの没後”32”年を記念して。
みなさん、よいお年を!













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flutist

ゴールドベルク変奏曲のアリアを練習中です。
よい年をお迎えください!
by flutist (2014-12-31 14:06) 

glennmie

flutistさん

今年一年、どうもありがとうございました。
美しいお写真に、とてもとても励まされました。
来年も、さらなるご活躍を!

ゴールドベルクを弾いていらっしゃる、素敵ですね。
今年もBachの音楽にどれほど励まされたかな、と思います。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。



by glennmie (2014-12-31 20:40) 

Mineosaurus

この演奏なつかしいなあ。この演奏を聴いていて、彼の解説を読んだ時昔ボクは「音楽への共感を感じる演奏」と「自己の感性と分析の発露として選んだ音楽を弾くこと」までのはるかな距離と幅の広さに思い至ったことでした。
当時の結論として、「グールドというピアニストは自分の主観的作曲家観を類まれな客観性を持って表現しているのではないか」と書き残しておりました。
音楽に対する敬意はあるけれど、それを生み出した人間に対しては冷徹な分析があって、それをさらに再構成する能力が有る。
音楽とグールドの間には作曲家とか何とか(余計なもの?)が挟まっていない。
最期のゴールドベルクを聴いた時にも極度に昇華された音楽と演奏家の関係を聴いたと今も思っています。

あ、忘れてた。良いお年を!良いコンサートを!
by Mineosaurus (2014-12-31 22:18) 

glennmie

Mineosaurusさん、明けましておめでとうございます。

Gouldは、自分の演奏を「re-compose」と言っていましたね。
作曲家の目線で作品をもう一度組み立てなおす、ということなのでしょうか。
彼の解説は、私にはチンプンカンプンなことが多いのですが(笑)、演奏を聴くと妙に納得してしまいます。
知性と霊感の人、すごい人です、ホント。

毎年のことですが、去年もまたMineosaurusさんには大変お世話になりました。
何度助けていただいたことか。
今年もまた、より以上にお世話になることと思います。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
エネスクを含め曲も貯まってきましたので、今年は発表の場が持てたらいいなぁと思っています。

Mineosaurusさん、良いお年をお迎えください。
くれぐれもお体を大切に。



by glennmie (2015-01-01 00:56) 

e-g-g

見事な“32づくし”ですね!
でも没後32年はまったくノーマークでした。

年が明けてしまってからのコメントになってしまいました。
私の乏しい音楽感性では難しいことも多々ですが、
今年も興味深い記事をお待ちしています。
by e-g-g (2015-01-05 18:54) 

glennmie

e-g-gさん、コメントありがとうございます。

>見事な“32づくし”
いや~、照れる・・・(笑)
結局何もわかってないですし・・・(汗)

Gouldの難解な言葉から少しでも何かを得られたら、と一生懸命頑張っています。
そして皆さんに助けていただきながら、多くを学んでいきたいです。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

by glennmie (2015-01-06 02:47) 

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