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ストコフスキーとGould [Gould]

指揮者、ストコフスキーさんのことは、実はよく知りませんでした。

親が持っている数枚のレコードと、子供の頃にディズニー映画の「ファンタジア」のビデオを観たくらいです。

ストコフスキーについて知るようになったのは、Gouldの著述「ストコフスキー、6つの場面」を読んでからでした。

「僕はもともと、楽屋口で、スターを待ったりする趣味はない。レオポルト・ストコフスキーを例外として。」と始まるGouldの文章はとても面白く、ついつい引き込まれて読んでいるうちに、彼と同じ目線で、すっかりこの風変わりな指揮者のファンになってしまいました。

Gouldが初めてストコフスキーに出会ったのは、やはり「ファンタジア」のアニメだったそうです。
ただ、この時は、小さな子供だったGouldは、総天然色の色の洪水に圧倒され、ピンクのカバに具合が悪くなってしまったそうで。

しかし、成長するにつれ、次第に彼の大ファンになっていったのです。

現実にストコフスキーと出会ったのは、Gouldがまだデビュー間もない頃、コンサート活動をしていた時期に、ウィーンの駅のホームで、偶然ばったり遭遇するのですね。
このくだりも、とてもおかしくて、どう偶然を装ってこの指揮者に近づこうかと、策におぼれるGouldの姿がなんとも可愛いです。

後に、この二人は、ベートーヴェンのピアノコンチェルト「皇帝」を一緒にレコーディングすることになるのですが、この録音風景の描写も楽しく、興味深く、このちょっと風変わりで魅力的な「皇帝」がどのように出来上がっていったのかがわかると、このCDもすごく身近に感じられます。
この録音中の様々なエピソードがまた、どれも楽しく、テープの編集中に隣の録音スタジオでバーブラ・ストライザンドがレコーディングをしていることを知ったGouldが、(彼は、バーブラの大ファンなんです)そわそわして、彼女の前で失態をさらしてしまうこと、ストコフスキーを不機嫌にさせてしまうところは爆笑でした。
本は違うのですが、この時のディレクター、カズデンの本にもこの時の模様が出ていて、レコードジャケットの写真を撮る時、若いGouldと並ぶのを嫌がったストコフスキーが、その写真を持って帰ってしまい、戻してきた時には、自分の顔のシワを修正してきたって・・・・・

まあ、二人の音楽とは全然関係ない小話ですが、二人の人間性が垣間見られて、この話がとても好きです。

Gouldは、結局、この指揮者から、随分影響を受けたんだと思います。
彼の曲に対するアプローチの仕方は、まさに、ストコフスキーの信念と同じだからです。

「ストコフスキーは、法悦であった。彼の、音符、テンポの指示、強弱記号に対する態度は、映画制作者が、原作や資料から映画についてのひらめきや発想を得るのと同じだった。」と彼は述べています。

後年、Gouldがストコフスキーにラジオ番組の中でインタビューした際、ストコフスキーは彼にこう述べています。

「紙に書かれた黒い記号・・・・我々は白い紙に黒い記号を書く。どこにでもある単なる事実だ。しかし音楽は単なる事実以上に、はるかに微妙なコミュニケーションなのだ。作曲家は、自分の内に偉大な旋律が湧き上がったとき、せいぜい紙にそれを書き記すことしかできない。それを音楽とよんでいるわけだが、本当は違う。それは紙にしかすぎない。人によっては、紙の上に記された記号を単に機械的に再現すべきだと信じているものもいるが、私はそうは思わない。それを超えたところまで行くべきなのだ。機械的な考えが強くなる一方の現在、我々はそうした概念から作曲家を守らなければならない。」

Gouldが若い頃、マーラーの交響曲「復活」の中の一曲を指揮している映像が残っていますが、タクトを持たず、手品師のような手の振りでオーケストラを操る、ストコフスキーにとてもよく似たスタイルでした。

また、コンサート中に拍手を禁止するという、Gouldの、いわゆるグッパータク計画も、それ以前にストコフスキーが「拍手をしないで」宣言をした事実に少なからず影響されていると思います。




Gouldは、合計4回、番組の中でストコフスキーと対談していますが、その最後のインタビューがとても印象的です。

Gouldは言います。
「マエストロ、私には繰り返し見る夢があります。その中で、私はおそらく別の太陽系と思われる惑星にいるのです。そして、夢の中で、その惑星に存在する生命体がいかなるものであろうと、それに対して自分の価値体系を分かち合えるチャンスと権威を授かったと信じて狂喜します・・・・・・」

なんて、なんて不思議な・・・・彼の平均律のレコードは、その後、人類を代表する音楽として、ボイジャーに乗せられ、宇宙に飛び立ったのです。

Gouldは、今も、広大な宇宙のどこかに、きっといるんだと、私は信じているんです。



      
(コメントが気になって、まともに本編を見られないよ・・・・・・)
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