SSブログ

楽譜の向こう側 [Gould]

「紙に書かれた黒い記号・・・・我々は白い紙に黒い記号を書く。どこにでもある単なる事実だ。しかし音楽は単なる事実以上に、はるかに微妙なコミュニケーションなのだ。作曲家は、自分の内に偉大な旋律が湧き上がったとき、せいぜい紙にそれを書き記すことしかできない。それを音楽とよんでいるわけだが、本当は違う。それは紙にしかすぎない。人によっては、紙の上に記された記号を単に機械的に再現すべきだと信じているものもいるが、私はそうは思わない。それを超えたところまで行くべきなのだ。機械的な考えが強くなる一方の現在、我々はそうした概念から作曲家を守らなければならない。」

これは、Gouldに語ったストコフスキーの言葉です。



楽譜を読み解くだけではない。
楽譜を超えたところ、楽譜の向こう側に思いを馳せる人。
Gouldもストコフスキーも、そういう人なんだと思う。


楽譜の向こう側、もしかしたら、作曲家自身も知らないもうひとつの世界。
「ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」が見える人。
Gouldもストコフスキーも、そういう人なんだ。







ピアノは猫でも弾けるらしい。
確かに。
猫が弾いても、私が弾いても「ド」は「ド」。(もっとも、厳密に言えば猫にピアノは弾けないよ、だってペダルに足が届かないじゃない)
ペダルに足は届くけど、私は猫以上に演奏技術があるわけではない。

技術って、共産国のオリンピック選手並みに鍛えれば、ある程度手に入りそうじゃない?
スポーツ選手のようにトレーニングを積めば、速く正確に鍵盤を叩くことはできるかもしれない。
でも、それって音楽することとは別の次元の世界のような気がします。
だから難曲を楽々と弾きこなすだけの、超絶技巧を誇るピアニストにはあまり興味がない。(もっとも、Gouldは超絶技巧持ってますけど)
自分のキャパシティーはたかが知れてるし、せいぜい自分が手に出来るだろう僅かな技術の取得に費やす時間と労力がもったいない気がします。




限られた自分の能力と時間の中で、どうしても持ちたいのは、楽譜の「向こう側」の世界。
厳密に言えば、楽譜の向こう側の存在を在らしめる、豊かで自由な想像力と霊感を生み出す「脳細胞」。
鉛を黄金に変える賢者の石。






天才バッハの賢者の石も、紙に載せてしまうとやはり黒い記号の塊だ。

photo.jpg


このたった24小節のシンプルな記号を、3分間の素晴らしい生命体に変えてしまう錬金術。
どこに行けば売ってますかねぇ・・・・


Glenn Gould " Sarabande "























nice!(13)  コメント(19)  トラックバック(0) 

nice! 13

コメント 19

glennmie

xml_xslさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-09 08:28) 

glennmie

PENGUINGさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-09 09:15) 

ユーフォ

売っているなら私も欲しい~ローンを組んでも(笑)
「ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」
まさにこの月に向かう旅はたぶん永遠に続きそうですね・・・。
by ユーフォ (2010-10-09 13:35) 

tamanossimo

楽譜にあることが出来なくて
楽譜にないことばかりやってしまう・・・今日このごろ・・・
向こう側は遠いなぁ・・・
by tamanossimo (2010-10-09 14:19) 

glennmie

Mineosaurusさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-09 19:11) 

glennmie

eternityさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-09 19:12) 

glennmie

ユーフォさん、どうもありがとうございます。

>ローンを組んでも
ここ、ツボにはまった(爆)
ほんとですね~
36回払いくらいまでなら、なんとか・・・
by glennmie (2010-10-09 19:14) 

glennmie

tamanossimoさん、どうもありがとうございます。

アイコンが変わっていたので、どなたかしらと思っちゃいました。
ピンクのバラ、素敵ですね^^

そうそう、楽譜に書いてあることすらまともに弾けないのに、高望みもいいとこでした。
まず、基本がきちんとできてからですね~(汗)
by glennmie (2010-10-09 19:16) 

arata

glennmie 様
Stokowski氏の言葉、深いですね。その領域に足を踏み込む事は、それこそ、Gould や Heifetz、Callas 級の芸術家だけに許される事なのだ、と思います。彼等の読譜力は、異常なほど深く、そして広いです。
僕のような凡人は、楽譜をしっかり読む事、その積み重ねによってのみ、なんとか、音楽らしき物を再現出来るのでは、と思っています。自分の限度を自覚する事も必要ですね。
arata
by arata (2010-10-10 00:00) 

glennmie

arataさん、どうもありがとうございます。

そうですね。
きちんと地に足をつけながら、理想は高く掲げて歩んでいきたいですね。
難しいことだけれども。
憧れはずっと遠くにいてくれた方がいいです。
そこに向かって一生懸命歩いていくことが楽しみだったりするわけですから。
音楽からいつも新しい刺激を受け取れる、そんな感性を磨いていきたいなと思います。
by glennmie (2010-10-10 00:59) 

glennmie

まるさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-10 01:00) 

glennmie

えーちゃんaaaさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-10 08:19) 

macha

これ、イギリス組曲4番のサラバンドですよね。私の持ってるレオンハルトのCDと全然弾き方が違うので、どのサラバンドなのかを特定するのに苦労しました。装飾音の加え方など、奏者によってかなり自由度があるみたいですね。
by macha (2010-10-10 14:37) 

glennmie

machaさん、コメントありがとうございます。

きれいでしょ~~~~!!!
ちっちゃなダイヤモンドみたいでしょ~???

私、常識では、とか通常は、とかどうでもいい。
ただ単純にきれいでしょ~!
この楽譜からこんなに美しい音のイメージを紡ぎ出す、彼の素晴らしさに参ってしまいます。
(厳密に言うと、この装飾音もちゃんとフランス風のスタイルを踏襲していて、只単に自由奔放というわけではないのです。本当にステキ!)
by glennmie (2010-10-10 21:39) 

glennmie

dorobouhigさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-10 21:40) 

glennmie

galapagosさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-10 23:48) 

アヨアン・イゴカー

演奏について考えされられる演奏ですね。
by アヨアン・イゴカー (2010-10-11 01:11) 

glennmie

アヨアン・イゴカーさん、どうもありがとうございます。

彼は自分の演奏を「recompose」と言っています。
楽譜をただ再現するだけではなく、再作曲するのだと。
演奏家がごちゃまんといる現代、彼のようなスタンスの演奏が新しい切り口を提示できるのかもしれませんね。
凄い人です。

by glennmie (2010-10-11 09:25) 

glennmie

りぼんさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-12 20:09) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。