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グレン・グールドをめぐる32章をめぐって [Gould]

今年もあと残すところ数日になりましたね。
今年最後の記事は、やっぱりGouldのことで締めくくらなくては。


Gouldを題材にしたドキュメンタリーは多々ありますが、彼を基に作られた映画は今のところひとつだけ。


”Thirty Two Short Films about Glenn Gould”  (グレン・グールドをめぐる32章)



Gouldの死後、約10年後の1993年に作られた映画で、タイトルの32章は勿論、ゴールドベルク変奏曲の32曲からきています。
彼の発言や人生の逸話を32のショートムービーに断片的に繋いだ、ユニークな映画です。
面白いかと聞かれると・・・・う~ん・・・ビミョウですね~^^;
全編、暗くて深刻で。
そういう一面も当然あったんでしょうが、もっと無邪気で楽しい面もあったはず。
描かれているエピソードは事実には間違いないのでしょうが、事実のどの部分に焦点を当て、どのように描くかは製作者の主観によるものだから、まぁ、こんな捉え方もあるのかなとも思いますが、悲壮感に満ちた暗い人生とは反対の、とても充実した、自分の理想を貫いた人生を歩んだ人だと、個人的には思っているのですよ。




最初の「Gould meets Gould」は、実際に彼が雑誌に書いたセルフ・インタビューの一節です。
GouldがGouldにインタビューをするのですが、これがとても面白いです。
こんなに深刻ではなく、もっとウィットに溢れていて楽しい文章ながら鋭く真髄を突いた内容で素晴らしい。
例によって、また日本語訳が違いますね。
Gould : グールドさん、話したくないことは?
Gould : 別にないですよ、音楽のこと以外は。
と、ややウケするとこなのに・・・・

(あと、この役者さんに言いたい。40代のGouldは、こんなじいさんじゃないですから。)

当時のインタビューを読んでみると、彼がステージを引退した「ドロップ・アウト」に関するものがとても多くて驚きます。
ステージに上がらないことがそんなに特別なことだったのかと。
当時は今のように多彩なメディアがなかったから、演奏家の表現手段はもっぱらステージの上だったのでしょうね。
だから、彼が自分のスタンスをどれだけ説明しても、当時の人にはなかなか理解されなかったのでしょう。
Gouldは、その他大勢の群集と化したコンサートホールの聴衆ではなく、アパートの部屋で、お茶の間で、リビング・ルームでレコードプレイヤーを操作して熱心に耳を傾ける、私たち個人、一人ひとりに音楽を届けたかったんだと思う。
そして、サーカス紛いの超絶技巧を披露して拍手喝采を浴びる、何かのショーのようなステージ・パフォーマンスを嫌っていました。
純粋に音楽を伝えるためには、演奏者は無名であるべきだと。
演奏家のいでたちなど、どうでもいいじゃないか。
どんな低い椅子に座っていようが、
弾きながら歌おうが、指揮をしようが、
真夏にオーバーコートを着ようが、
そんなこと、どうでもいいじゃないか。
イケメンだろうが禿げてようがそんなの音楽と関係ないだろ、ほっといて下さいな、と思っていたのでしょうね。

ヒドイね、これ。これ見て笑う人がいるんだね。
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人嫌いのGould・・・・自分の真剣で一生懸命の行動が曲解され利用されれば、人間不信にもなってしまうよ。


そう言えば、、ビートルズもライブでのショー・パフォーマンスに疑問を感じてステージを降りたのですよね。
その時も大騒ぎになったのでしょうか。
どちらも、レコーディングをアートと考える方向性を持っていたのも興味深いです。
コンセプト・アルバムという発想はこの頃から出てきたものでしょう。






ここの場面はちょっと怖い。


ふ~ん・・・・
ちなみにバッハの亡くなった年齢は・・・・65歳・・・・・あっ[あせあせ(飛び散る汗)]・・・・・








この映画の監督はフランソワ・ジラールさんです。



彼の「レッド・ヴァイオリン」はとても素敵な映画です。
最近では、シルク・ド・ソレイユの演出を手がけて来日もしていました。









最後に、この映画で私が一番好きな場面です。
とてもGouldらしくて印象的。






素晴らしい彼に、乾杯![喫茶店]
みなさん、良いお年を!







タグ:gould glenn
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tamanossimo

あたしからも乾杯~♪
良きお年をっ!
by tamanossimo (2010-12-27 13:35) 

arata

glennmie 様
僕もこの年齢になって、漸く、演奏家は作曲家・音楽を愛聴する人達の奉仕者なのだ、という実感が湧いてきました。ステージであれ、客間であれ、主役は音楽そのものであって、演奏家はその僕なのだと…。
M.Callas は<歌うと言う行為は、身を低くする行為である。そこに至れば、高みに昇ろうとする行為にすぎない>と生前言っていました。何処となく、Gould の精神と共通しているなと、感じます。彼女は、<聴衆を前にした演奏に勝るものはない>とも言っていますので、スタンスは違うのでしょうけれど…。
ともあれ、良き年末年始をお過ごし下さいませ。
arata
by arata (2010-12-27 21:38) 

glennmie

tamanossimoさん、どうもありがとうございます。

tamanossimoさんにも、乾杯!
今年一年、お付き合いくださってありがとうございました。
これからも、どうぞ宜しくお願いします。
良い一年となりますように。
by glennmie (2010-12-28 02:37) 

glennmie

arataさん、どうもありがとうございます。

私のブログの拙い記事に、たくさん、ステキなコメントを付けてくださってどうもありがとうございます。
いろいろ貴重なご意見やアドバイスをいただいて、とても勉強になりましたし、励みにもなりました。
とても感謝しています。
音楽に対する、arataさんの誠実で真摯な考え方は、CallasやGouldの精神と通じるものがあると思います。
私が目指す音楽のありかたも、そうでありたいと思っています。
また、いろいろ教えていただけると嬉しいです。これからも宜しくお願いいたします。
arataさんも、良いお年をお迎えください。

by glennmie (2010-12-28 02:49) 

glennmie

ぺるり提督さん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-28 02:51) 

glennmie

Mineosaurusさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-28 02:51) 

glennmie

Ahnanteさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-28 02:52) 

glennmie

eternityさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-12-29 00:40) 

glennmie

takemoviesさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-29 00:41) 

glennmie

ぼんぼちぼちぼちさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-29 00:42) 

glennmie

コトキャンさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-29 00:42) 

Mineosaurus

今年一年楽しませて頂きました。来年もどうぞ宜しく。
by Mineosaurus (2010-12-29 09:53) 

FN

今年を締めくくるglennmieさんの所感記事、とても読み応えがありました。

glennmieさんの音楽文章はいつも鋭くモダン(都会的)で正統的ですが、
随所にユーモアと時折り辛らつさも交わり、それらが大変に興味深いです。

今年はこのブログの愛読者になってほんとうによかったと思っています。

ありがとうございました。どうぞ来年もよろしくお願い申しあげます。

by FN (2010-12-29 22:25) 

glennmie

Mineosaurus さん、

私の方こそ、大変お世話になりました。
来年以降も、私はMineosaurus さんの熱心なファンとして暮らしていく所存です。
素晴らしい記事と作品を楽しみにしています。
こちらこそ、どうぞ宜しくお願いいたします。
by glennmie (2010-12-29 23:25) 

glennmie

FNさん、コメントどうもありがとうございます。

思春期の頃、サリンジャーの「フラニーとゾーイー」という小説を読んで心から共感しました。
今でも、当時と変わらない感動でこの本を読み返しています。
ここで語られていることとGouldの発言は、とても似ている。
その素晴らしさを書きたかったのですが、半分も言えてませんねぇ^^
この続きは来年に持ち越しということで。

FNさんとブログを通してお知り合いになれて、本当によかったと思っています。
沢山の暖かいコメントも、とても励みになりました。
私の方こそ、感謝しております。
ありがとうございました。
拙い内容の記事ばかりで滅多に成長しませんが、またいろいろご意見やアドバイスをいただけると嬉しいです。
来年も、どうぞ宜しくお願いいたします。
by glennmie (2010-12-29 23:53) 

glennmie

あすぱらさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-29 23:54) 

glennmie

PENGUINGさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-29 23:55) 

glennmie

とる子さん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-30 02:01) 

Cecilia

グールドの写真集を立ち読みしたことがあるのですがまた見てみたくなりました。
でもそれ以上に彼の音楽をもっと聴いてみたいです。
演奏家の活動が多様化している現代なら特に変わった人だと思われないかもしれませんね。
もっとも「変わっている」というのはうちの娘からすれば褒め言葉なのですが。
大体コンサートホールで演奏するというのも歴史が浅いですよね。

来年もglennmieさんの素敵な演奏を楽しみにしています。
良いお年を。
by Cecilia (2010-12-30 08:23) 

glennmie

Ceciliaさん、どうもありがとうございます。

Gouldが今の時代を知ったら喜んだでしょうか。
一見、彼の行き方に相応しい世の中に近づいたように見えますが、自然は益々破壊され、人々の心も豊かになったとは言えない。
この、子供たちが生きにくい世界を知ったらどう思うでしょうね。
どんなに時代が変わっても、彼の音楽は変わらず素晴らしいままでいつまでも生きていてほしいです。

Ceciliaさんと、ステキな「変わった」お嬢さんも、良いお年をお迎え下さい。
来年もどうぞ、宜しくお願いいたします。
by glennmie (2010-12-31 02:09) 

glennmie

galapagosさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-12-31 19:49) 

ユーフォ

今年も素晴らしい記事をありがとうございました~
来年もどうぞ宜しくお願い致します。
良いお年を~(@^^)/~~~
by ユーフォ (2010-12-31 22:32) 

glennmie

ユーフォさん、どうもありがとうございます。

いつもご訪問くださり、心のこもったコメントをつけてくださってどうもありがとうございます。
こちらこそ、来年もどうぞ宜しくお願いいたします。
相方さん共々、良いお年をお迎えください。

by glennmie (2010-12-31 23:14) 

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