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Gould と GOULD [Gould]

Gouldの弾く、パルティータ5番のGigueです。



1957年録音とありますから、彼が25歳の頃。
まだ公の演奏活動をしていた頃の録音です。

彼はこの自分の演奏に落胆し、これが直接の原因ではないのかもしれませんが、後にコンサート活動を”ドロップ・アウト”してスタジオに篭ることになっていきます。

これ、とっても素晴らしい演奏。
何がダメなのかしら。。。と思うのですが、彼曰く、ステージ演奏の悪いクセがついてしまったのを知ってがっかりしたよと。

客席の隅々まで音を届けたい、と思うあまりに思わず音量を上げてしまったり、お客様に喜んでもらいたい、賞賛されたいと思うあまりにがんばっちゃう演奏家の心理って、ステージでは当然のことなのでしょうが、それが、音楽を歪めてしまうのだということなんですね。



一回限りのライヴ演奏で、ブラボー!の嵐と共に煙のように消えてゆく名演奏。
彼の理想は、そんなところにはなかった。
こちらは、それから6年後の1963年録音のパルティータ4番のGigueです。



凄いです~~~~!!
最初、ポツンと遠くの暗闇に浮き上がるテーマがだんだんと厚みを増してくる対位法のうねりに乗って、グングンとクローズアップされてくる距離感、立体感。
マイクの位置やピアノの音色、残響の加減、全てが緻密に計算されて作られた録音芸術。
これこそが、GLENN GOULD。
凄いです、本当に。



カナダ出身のいちピアニストGlenn Gouldは、ピアノにこだわり、マイクにこだわり、スタジオの中でひたすら理想の音楽を追求することで、不滅の唯一無二のピアニスト「GLENN GOULD 」を自ら作り上げていったのだと思います。





最近、カナダ国内で活躍していた若い頃やデビュー前の少年時代の録音が次々とリリースされていますが、
Gould自身はこの事態を喜んでいるでしょうか。
「GLENN GOULD」ブランドからはずれた録音たち。
もう新譜が出ることのない人だから、ファン心理としては仕方がないことなのかもしれませんが、複雑な気持ちになります。






そして、コレはおまけ。


51kX7i9CVuL__SS500_.jpg



55年デビュー盤の録音テープを解析してMIDIファイル化し、自動ピアノで再演したゼンフスタジオ盤です。
これは、どうかしら。
もしかしたら、こういう試みはGouldも面白がったかもしれませんね^^
事実、ラフマニノフ盤にはちょっと、おぉ!っと思いましたけど、でも私はいらないなぁ。
いくら忠実に再現と言われても、人の気配が感じられない、何の風も吹かない無機的な音にしか聴こえないんだなぁ。

IMG_1435.jpg


このCDの音は、これが弾いてるのが見えちゃうんだなぁ。
感想は、一言。
「返品させろ」ですかねぇ・・・・









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アヨアン・イゴカー

グールドの演奏は、バッハの楽譜が立体的に聞こえます。技術が完璧だからこのようなことが可能になるのでしょうね。
by アヨアン・イゴカー (2011-06-19 02:05) 

Mineosaurus

自分の中にあるバッハを自分の言葉だけで言い尽くす。
自分の中にあるバッハをコンサートという空間の重要な構成要素として位置づけ、コンサート自体の他の要素に出来不出来の一部を依存する。
「コンサートは死んだ」のではなく、「コンサートの中の構成要素であるGouldは死んだ」と、当の本人は決意したのかも知れません。
彼の作品のほとんどはデジタル・リメイクとなり、音楽的なコンピュータ処理によって0と1の複雑な並びに置き換えられています。スクラッチノイズもスタジオのわずかな、雑音も削除され、純粋にGouldだけが存在する。若き日のGouldのもうジャケットも色褪せ、角が取れ、LPの白かった中ジャケットにも茶色い染みがある。
CDも棚にあります。
それでもレコードの針を落とす自分がいるのは、0と1ではとらえられない何かが聞えているんでしょうかね。
音楽は無限ですね。
by Mineosaurus (2011-06-19 12:45) 

glennmie

アヨアン・イゴカーさん、

ピアノでBachを弾く意味を最も意識したピアニストとして、未だにGouldを超える人に出会っていません。
もしかして永遠に出会えないかもしれません。
早くにステージを引退して、当時の人にとっては残念なことだったかもしれませんが、多くのスタジオ録音を残してくれたことは、後からやってきた私たちファンにとってはとてもありがたいことでした。
彼の貴重な演奏記録は、驚きの連続、まさに宝の山ですね。
by glennmie (2011-06-19 21:00) 

glennmie

Mineosaurusさん、

学生時代、音響工学の授業で、蓄音機を作って自分たちで録音、再生するという面白い体験をしました。
手作りの簡単な蓄音機でしたが、録音したヴァイオリンの音色が本当に臨場感に溢れていて、呼吸まで聴こえてくるかのような生々しい音でビックリしたことを覚えています。
音をデジタル化することが、必ずしも音楽の向上には結びつかないのだなと思ったものです。
Gouldのアナログのレコードは、実は4枚しか持っていません。(それも、親の所有物です)
ですが、レコードに針を落とすときの緊張感、スクラッチ音の向こうから立ち上ってくる音楽のワクワク感みたいなものは、私にも経験あります。
レコードに針を落とすのは、とても大切な時間がこれから始まるのだという、聴き手側の意識にとっても、とても大切な瞬間ですね。
by glennmie (2011-06-19 21:18) 

ユーフォ

Gouldさんはピアノも素晴らしく、その上イケメン!
これでは、世の女性はクラクラですね♥

訪問が遅くなりましてすみません(ToT)

チーバくん地方ですので、横浜ならば… 
大丈夫ですっ ^^

でもでも、お忙しく無い時で、ご迷惑でなくて
体調も良い時で、そしてそして、glennmieさんの
気が向いたそんな日がありましたら…
ユーフォのブログのメールフォームへ
お知らせ下さいますか?
お手数をお掛けしてしまいます。
すみませんっ (^^ゞ
ユーフォ相方
by ユーフォ (2011-06-20 08:06) 

glennmie

相方さん、

そうですね~^^
クラクラですね~(*゚ー゚)>
でも、たとえもし、万が一、お顔が小沢一郎さんだったとしても、中身がGouldだったら私は構わない!!
アッ、でも中身が気高いGouldだったら、あんなお顔にはなりませんね、きっと。

ユーフォさんのメールフォーム・・・・あぁ!了解です^^
大きな地震が再発する前に、原発の4号機が倒壊する前に、やりたいことは先延ばししないで実行しなくては、ですね。
by glennmie (2011-06-20 10:01) 

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