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反ピアニスト [Gould]

今日のMineosaurusさんの記事を拝見していて、いつもながら記事に感動し、流れていたブルックナーに感動し、いろいろなことを考えました。

ブルックナーの弦楽五重奏曲、アダージオ。

大好きな曲です。
これを聴きながらGouldのインタビューを思い出していました。



インタビュアー(ヴィンセント・トヴェル):何の曲ですか?
GG:ブルックナーの弦楽五重奏曲です。
VT:こんなロマンティックな曲が聴けるとは思っていませんでした。
GG:彼の最高傑作だと思います。ブルックナーの曲で、クライマックスの度に金管が轟かないのはこの曲だけです。素晴らしい。
VT:弦楽器の音楽ですね。個人的な楽しみのためにしか弾けませんね。
GG:そうですね。同時代のほとんどのピアノ曲よりブルックナーをピアノで弾く方がずっと楽しいんです。



ドイツのことを語りだすと、何故かこの人はドイツ訛りになる・・・・(笑)



Gouldの弾くバッハに魅了されてずっと聴き続けていますが、実は私が一番好きなGouldは、ここにいます。
僕はピアニストではないと言い、30歳になったら作曲家になりたいと言い、50歳になったら指揮者になりたいと言っていたGould。
反ピアノ的な姿勢で演奏するピアニスト。
ピアニストでありながらピアニスティックなものを嫌い、ピアノを弾きながらピアノの向こうにもっともっと大きな音の宇宙を見ていたGould。

「僕が日頃から抱いている確信は、重要な作曲家の大半にとってピアノは管弦楽の代替物であったということです。ピアノは本当は弦楽四重奏や合奏協奏曲の編成や大管弦楽などの形で演奏されるべき音楽を響かせるために存在してきたのです。脳裏に別の音響体系を持たずにピアノ曲を書いた作曲家に一流の人はほとんどいないと思います。」



自分のことで恐縮なのですが、子供の頃相次いでピアノの先生に嫌われてしまった私が、最終的にレッスンを見ていただいたのは作曲家の先生でした。
自分にとってはこれがとても良かったと思っています。
勿論、技術的なこと、演奏の奥義などは教えていただかなかったので、未だにピアノの腕は・・・・・・ですが、それには代えられない沢山のことを教えていただきました。
当時の楽譜を見てみると、ここは金管、ここはチェロ、などと書き込みがしてあります。
作曲家の方はピアノの曲も管弦楽を分析する目で解釈するんだなぁ、と思ったものです。



Gouldは、管弦楽やオペラなどもピアノで自由自在に再現できたそうです。
記録として残っているのは彼が自分でアレンジ、録音したワーグナーの作品が少しとラヴェルの「ラ・ヴァルス」くらいで、後はこの音源のように自分の楽しみのために限られてしまっているのが残念です。
両手で足らないパートは自分で歌って、今日はどのパートを弾いてどこを歌おうかなんていいながら楽しんでいたそうで。
なんて素晴らしい。

もっと沢山、管弦楽物の録音を残して欲しかったなと思います。
自分も密かにアレンジなどというものを試みているのですが、全然だめなのね~・・・・
オーケストラやアンサンブルの曲をピアノに移すとき、対位法をうまく操れないとぺっちゃんこになってしまう。
Gouldが言うところの「素晴らしく陳腐なるもの」、「教会の親睦会でのいわゆる”ブンチャッチャ”風の音楽」。
なんて的確で素晴らしい表現(汗)


・・・・・・・


さて、秋の夜長、少しでも勉強しよ。





gould2.jpg



















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Mineosaurus

同感です。そしてまた優れた作曲家がピアノに向かってシンフォニーを書いているとき多分全ての音が鳴っている中でヴァイオリンがチェロがファゴットがホルンが、その脳裏に立ち上がっているんでしょうね。

by Mineosaurus (2010-09-17 08:57) 

glennmie

Mineosaurusさん、どうもありがとうございます。

私、作曲家や指揮者ってこの世で一番かっこいい職業だと思っているんですが、音楽を知れば知るほど、ただの楽士では終わりたくないというGouldの思いが理解できるような気がします。
こういう音楽家が沢山いて欲しいですね。
by glennmie (2010-09-17 12:15) 

glennmie

xml_xslさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-09-17 12:15) 

glennmie

galapagosさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-09-17 18:56) 

ユーフォ

glennmie様のアレンジ・・・興味津津~(^^♪
by ユーフォ (2010-09-18 02:11) 

glennmie

ユーフォさん、どうもありがとうございます。

安っぽいですよ~~~^^;
まさにGouldの言う「素晴らしく陳腐なブンチャッチャ」
・・・・・・
しかもさらに、ワンパターン(涙)
by glennmie (2010-09-18 03:11) 

glennmie

mwainfoさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-09-18 12:25) 

tamanossimo

この1音の意味・・・
この1声の向こう側にあるもの・・・
知ること、そして感じることが大切なのね!?
ああぁ・・・
by tamanossimo (2010-09-18 14:37) 

macha

もともとフーガとかカノンとかって、複数の楽器による演奏を鍵盤で再現しようって発想だったんじゃないですかね?どうなんでしょう?
by macha (2010-09-18 18:20) 

glennmie

tamanossimoさん、どうもありがとうございます。

そうですね^^
そして楽しくないとね。

幸せになれない音楽は・・・・いらない


by glennmie (2010-09-18 20:46) 

glennmie

machaさん、コメントありがとうございます。

ポリフォニーの起源は、教会音楽から。
それが4声体の声楽曲に発展したものでしょう。
だから、この時代の音楽は器楽曲も声楽曲も、もともと多声の対位法のスタイルでできていたということですね。
和声中心のホモフォニーになるのはこの後の時代ですから。

by glennmie (2010-09-18 21:00) 

glennmie

アヨアン・イゴカーさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-09-18 22:19) 

glennmie

dorobouhigeさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-09-20 19:05) 

glennmie

まるさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-09-21 00:23) 

glennmie

ぼんぼちぼちぼちさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-09-24 22:05) 

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