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Clavier-Ritter [音楽雑感]

「かつて存在し、また将来存在するであろう全てのものの中で最も偉大な音楽の詩人、最も偉大な音楽の語り手・・・この人はドイツ人であった。
祖国よ、彼を誇れ。誇れよ彼を。
そしてまた、彼に相応しいものとなれ。」
          ・・・・・ヨハン・ニコラウス・フォルケル




先日のバッハのお勉強会で、先生がフォルケルの本のお話をしてくださいました。
様々な問題点を持ってはいるものの、やはり一度は読んでおくべきでしょう、と仰っていました。
確かうちにあったかも・・・と思って親父の書棚をゴソゴソ探したら、出てきた!

でも、
"Ueber Johann Sebastian Bachs Leben, Kunst und Kunstwerke" (1802):Johann Nikolaus Forkel
ドイツ語じゃん・・・・ガクッ・・・・

「ヨハン・セバスティアン・バッハの生涯、芸術、および作品について」
冒頭の文章はその最終ページのものです。
せっかくだから原書を読んでみようと辞書を片手に頑張っていますが、読み終えるまでに寿命が尽きてしまいそう。
邦訳で出直そうかな、と思いつつノロノロ読んでいたら、気になる言葉が出てきました。

Clavier-Ritter

直訳すると、「クラヴィーアの騎士」となるのかな。
なんかカッコイイけど。
(コメントでmetroさんに教えていただきましたが、英訳ではkeyboard-squire、鍵盤の従者でしょうか)
バッハはお弟子さんにダメだしをするときに「Clavier-Ritter!」と言って戒めたんだそうです。
楽器にしがみついて鍵盤の上だけで音楽をしなさるな、ということなのでしょう。
クラヴィーアから離れて自由な気持ちで作曲をしなさい、音楽を感じなさい、と。
実り豊かな想像力、独創的な楽想は鍵盤の上にはいないのですよ、と。

ピアノをただ弾くだけでも、それはとても楽しい。
音楽は楽しいもの、だからそれでいいじゃないか、とも思います。
でも、音楽が美しく楽しく響くためにはその中に、調和を成立させるための高度で複雑な理論や技が沢山詰まっているのだ。
真に音楽を理解して楽しみなさい。
ただ鍵盤を叩くだけのカントールにはなりなさるな、真の音楽家になりなさい、ということだと思います。


素晴らしいバッハの指導の下から、彼のお弟子さん達は個性豊かに自由に羽ばたいていきました。
「四角四面なキルンベルガー、奇抜なミューテル、天才クレブスとW.F.バッハ、実験的なC.P.E.バッハ、調和を旨とするホミリウス」(コープマンの著作より)




一方、
Clavier-Ritterになることすら儘ならない私。
バッハの残してくれた作品たちを一生懸命に学び、正しく理解しようと努力すれば、こんな私にも音楽の道は開けてくるのかな・・・

そう、信じたいです。






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コメント 28

glennmie

takemoviesさん、nice!ありがとうございます。

by glennmie (2010-10-19 22:36) 

glennmie

xml_xslさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-19 22:36) 

glennmie

よってさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-19 22:37) 

glennmie

アヨアン・イゴカーさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-20 00:34) 

metro

いつも楽しく興味深く読ませていただいて感謝しております。「Clavier-Ritter」という言葉(表現)を初めて知り、とても面白いと思って、ぐぐってみたら下記の一文を見つけましたので、ご参考まで。

To students of composition today it may be interesting to know that Bach was most stringent in prohibiting his students from composing at an instrument. To those who were not able to write without the instrument he applied the chaffing title "clavier-ritter" (keyboard squire). (http://www.oldandsold.com/articles02/jsbach3.shtml)


by metro (2010-10-20 09:41) 

glennmie

metroさん、コメントありがとうございます。

なるほど、英訳にするとわかりやすいですね。記事の方も補足を加えておきました。
助かりました。ありがとうございました!
バッハは素晴らしい音楽家であったばかりか、素晴らしい教育者でもあったんですね、つくづく実感します。
by glennmie (2010-10-20 10:48) 

glennmie

ユーフォさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-20 10:49) 

arata

glennmie 様
本当に J.S.Bach ハ偉大な音楽家・教育課・芸術家なのですね。この記事を読んで、改めてJ.S.Bach の偉大さを感じました。
音楽をする為には、楽器を上手く操作するだけじゃ、余りにも不十分であるという事を、この文章から、思い知りました。僕にとっても、真の音楽をする事は、余りにも遠い目標です。でも、勉強を欠かさず努力すれば、少しは近付けるかも知れない…そう思っています。踊りも、また然りです。
arata
by arata (2010-10-20 11:12) 

glennmie

arataさん、どうもありがとうございます。

芸術の道は遠くて険しいですね。
でも、音楽に対する姿勢を教えていただいただけでも、私はバッハに感謝したいです。
こだわらなけれればそれで終わり、知らなければそれで済んでしまったでしょう。毎日を何事もなく過ごしていけたでしょう。
しかし、せっかくいただいた命です。目標に向かって努力すること、またその努力が喜びであること、そんな人生を教えてくれた音楽というものに感謝しています。
by glennmie (2010-10-20 12:25) 

tamanossimo

歌に変えてみれば
発声とかテクニックにとらわれずにってことかなぁ・・・

「音楽を感じなさい。実り豊かな想像力、独創的な楽想」・・・
わかってる・・・
もちろん、そう、思うの~
だけど・・・発声が悪ければ全ては活きないってこともわかるし・・・ ふぅ。
by tamanossimo (2010-10-20 20:53) 

macha

バッハの教育者としてのすごさってよくわかります。
インヴェンジョンなんかは、練習曲でありながら、
芸術性に関して本格的な楽曲と全く遜色なかったりしますよね。
ああいうところが、バッハの魅力のひとつでもあると思います。

しかし、その冒頭の文章は何なんですかねー。
バッハを祭り上げてナショナリズムの高揚に結びつけていた
頃の文章なんではないかという気がします。

by macha (2010-10-20 20:55) 

glennmie

tamanossimo さん、どうもありがとうございます。

そうですね。
バッハのこの言葉は作曲を教えているお弟子さん達に向けられた言葉です。
楽器にとらわれず、イメージの世界で音楽を操りなさいということなんだと思います。
声楽の方は自分の体が楽器になるわけですから、簡単に楽器を取り替えるわけにはいきませんよね。
でも、ちょっと違うのかもしれませんが、Gouldが自宅のオンボロのチッカリングというピアノで演奏するビデオがありますが、音、滅茶苦茶悪いんですけど凄い演奏でしたよ。
昔のピアニストたちの演奏も、録音技術がよくなくてあまり言い音ではないのですが、凄い演奏はそんなものも超えて凄いですよ。
うまく言えないんですけど、楽器ではなく演奏者の問題なのではないかしら。
その人がどれだけ、どのように音楽を感じているか、最後はそこに行き着くんだと思います。
by glennmie (2010-10-20 21:53) 

glennmie

machaさん、コメントありがとうございます。

やっぱり。
気になりましたか。
フォルケルが生まれたのはバッハが亡くなる年のあたりです。
彼の書いたバッハ伝は、バッハその人からではなく、残された息子たち(主にフリーデマンやカール・フィリップ)やお弟子さん達の記憶をもとに書かれているそうです。その頃のドイツがどんな時代だったのかよくわからないのですが、ただ既にバッハは過去の人、時代遅れの人として忘れ去られる存在だったようです。
ずーーっと後にメンデルスゾーンが復活させるまで、バッハは時の中に埋もれていました。
こんなに素晴らしい人をもう一度よく見て!という思いが強かったのではないかしら・・・・
by glennmie (2010-10-20 22:02) 

のん

なんか感慨深い言葉がたくさんありました。
ありがとうございます♪

あたしはまだまだ弾くことに精一杯で
音楽的に弾けないけれども、日々勉強をして
一歩でも音楽的に弾けるようになりたいなって思います。

by のん (2010-10-20 22:30) 

macha

当時ドイツはザクセンとかプロイセンとか小さな国々に分裂していたはずですが、ドイツ語圏を一つの国にまとめなきゃいかん、というような意識はその頃からあったのでしょうね。実はドイツ統一されて一つの国になったのは日本の明治維新(1868)よりも後(1871)なんですよ。あ、私、歴史マニアです。笑

しかし、素朴な疑問ですが、そんな「お前の音楽はなっとらん!」なんて弟子たちに喝を入れるような親分肌の人が、いくら音楽のトレンドが変わっていく時代だったからといって、死後、数十年も忘れ去られた状態になることがあるのでしょうか?バッハの人間像って後世の人たちの都合のいいように作られてるんではないかと思いますね。もちろん、何の根拠もないので、ただの想像ですけど。

by macha (2010-10-20 23:13) 

glennmie

のんさん、コメントありがとうございます。

そうですよね~
私も、弾くことに精一杯でそれ以上のものはまだ見えてこないのが現状です。
でもね、だからこそ、楽器に向かう前に、音楽するようにしています。
楽器に向かってしまうとミスタッチしないように、とか指使いなんだったけ、とか、音楽そのもののことじゃない些末なことに気をとられてしまって、どんどん理想から遠ざかっていってしまうんです。
頭の中で理想像を確認する作業ってとても大切なんだと思う。
私なんかがヘタな演奏をしなくたって音楽は確実に歴然とあるわけなんだから、そのことを確認することが何より大切なんじゃないのかな、と思うんですよ。
by glennmie (2010-10-20 23:20) 

glennmie

machaさん、

出た!元禄文化!
そうなんですか、そんな時代だからこそドイツ魂に訴える文章になったんでしょうか。
バッハは田舎町から出なかったし、生存中もそれほど注目される作曲家ではなかったのかもしれません。
そういう意味では、ヘンデルなんかとは対照的な位置にいたんですよね。
生存中から、既に彼の音楽は時代遅れだといわれていたみたいだし、それでも彼は最後まで頑固にポリフォニーのスタイルにこだわりを通したんだとおもいます。
一般的なバッハの人間像って、よくわかってないんですが、Gouldはバッハを究極の頑固者と呼んでいましたよ。時代に背を向けて最後まで対位法を極めようとしていた人だって。

by glennmie (2010-10-20 23:36) 

glennmie

galapagosさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-20 23:37) 

macha

ははは、元禄はバッハの若いころね。
ちなみに、私、実はドイツに住んでたこともあるんですよ。
ミサ曲ロ短調に関係ある街ですけど、わかりますか?
ドイツの話は結構燃えます。笑

by macha (2010-10-20 23:59) 

glennmie

machaさん、

そうなんですか!
ロ短調ミサ?
ライプツィヒ?
いいなぁ~
本場のトーマス教会でこのミサ、聴きました?
そうだ!ドイツのことはmachaさんに聞けばいいんですね。

by glennmie (2010-10-21 00:29) 

macha

残念!ライプツィヒじゃありません。もっと東。
トーマス教会も見に行ったことならあります。
実はあんまりコンサートとかに行かなかったんですよ。
今思うとすごくもったいないんですけど。

by macha (2010-10-21 00:37) 

glennmie

machaさん、

ええ~、そう、もったいない~すごく

どこ~?
ドレスデン?
いいな~~!
ドイツ語ぺらぺら?
by glennmie (2010-10-21 01:16) 

macha

あたりです。でも英語が精いっぱいで、ドイツ語は日常会話しかできません。
ビールもう一杯、とか、お勘定お願いします、とか。笑

by macha (2010-10-21 01:20) 

glennmie

machaさん

羨ましいですね~!
バッハと同じ地面を踏んでたんですね。
観光旅行とかでなく、滞在してみたいです。
大学の図書館とか入り浸りたいなぁ・・・
その土地の空気とか言葉ってとても大事ですよね。


by glennmie (2010-10-21 01:29) 

glennmie

bee-15さん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-21 20:30) 

glennmie

Mineosaurusさん、nice!ありがとうございます。
by glennmie (2010-10-21 20:31) 

Mineosaurus

柴田さんの(柴田治三郎)のしっかりした訳本があったはずですが、ほかにもいくつか日本語に訳した本があります。原書で読まれる父上は凄いね。
by Mineosaurus (2010-10-21 20:50) 

glennmie

Mineosaurus さん、教えていただいてどうもありがとうございます。

そう、親父は大昔に、自分だけさっさと読んでいたらしい。
私には何のおすそ分けもありませんでしたよ。な~んにも!

いいです、私は自力で頑張ります。
柴田さんの本、岩波から出ていますね。
あと白水社から出ている角倉一朗訳も良いとききました。
この際だから、全部の訳本を取り揃えて読破します!
by glennmie (2010-10-21 21:29) 

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