SSブログ

楽典マニア [音楽雑感]

私、楽典が大好き。
もし独房に入れられても、楽典の本一冊差し入れてもらえたら終身刑でもOKかも。
音のしくみを考えながらあれこれと思いを馳せるのは、素敵な音楽を一曲聴くのと同じくらいに充実した気分になれます。




いまさらなのですが、ヨーロッパ音楽の発想って、とても面白い、とつくづく思う。
目にすることもできない、手にとることもできない、時間とともに幻のように消えていってしまう「音」。
この「音」を12個の素材として、まるで建築物のように積み上げ、編み上げ、色彩を持たせ、ひとつの空間を作り上げるという発想がとても面白い、と思うんです。


「音」を「構築」する。
そのためには、様々な決まりごとや理論が前提として存在しなければならない。
音楽は、ただ聴くだけでも楽しい。何も考えなくても楽器を触って音を楽しめればそれでいいではないか。
そう、そうかもしれないです。
でも、その楽しく美しく響く「音楽」は、長い間に渡って練り上げられてきた複雑で緻密な試行錯誤の上に成り立っているのだとしたら、
やっぱり知りたい、知らなくっちゃ!と思うわけですよね。



ところが「楽典好き」を、場をわきまえずアピールしてしまうと、「変な奴レッテル」を貼られてしまうことがあります。
「楽典」というと、真っ先にみんなが思い浮かべるのは、例の、あの、黄色い、[満月][満月]本なのでは?
私もあの本は嫌いです。
つまらないし、説明読んでも何のイメージもわかないんですもの。




昔から感じていたことなのですが、
どうして日本の理論書って、難しくて味気ないものばかりなのだろうか。
個人的にすごく思うのは、
ごちゃっと漢字ばかりで表される「音楽用語」のせいもあるんじゃないの?
漢字を使うことが悪いということではなくて、
この用語はこう訳そう、とするときの言葉を選択するセンスがさえない、んじゃないの?


外国語の理論書って、(もっとも私の場合はほとんどが英語の本なのですが^^;)面白いんですよ。
説明文がとてもわかりやすくて、直感的に想像できる表現が多いように思います。
(これって、例えば薬の処方や機械のマニュアルについても同じことが言える。英語の説明のほうが具体的にイメージをつかみやすいように感じます。)


例えば・・・
ト音記号は、英語では「G-clef」といいます。
そうか、あの記号はg の変形なのか、とすぐにわかるし、

例えば・・・
Bachのクラヴィア曲に頻繁に登場する、バスの音を何小節も長~く伸ばす「保続音」。
これを英語では「organ point」というんです。
パイプ・オルガンのバス(足鍵盤)の低音がブーンと鳴り響くのが聞こえてくるようでしょう?

例えば・・・
フーガの中に登場する「嬉遊部」。
提示部間をつなぐ役割を持つ部分ですが、英語では「fugal episode」。
フランス語では「divertissement」。
説明をきかなくても、何かピーン[ひらめき]とくるでしょう?





「主音」、「属音」っていう言い方も、なんだかなって感じ。
ハ長調でいうと、「ド」が「主音」で5つ上の「ソ」が「属音」です・・・・って言われてもなんだかな・・・・・

属音=ドミナント。
ドミナントという言葉からはいろいろなイメージが浮かぶんですが。
空間にポツンと「ド」がいても、あなたは誰?なんですよね。
「ソ」が「ド」に向かうから、その「ド」はハ長調の主役となれるわけで、
だから「ソ」はドミナントなんですよね。

「ファ」はサブ・ドミナント。「サブ」は「下」という意味。
「ド」から見て、5つ下のドミナントという意味。

暗闇にポツンといる「ド」は、上から「ソ」に、下から「ファ」にドミナントされてはじめてハ長調の主役になれるのだという発想。

音階は紙に書いてしまうと、2次元の音の並びにすぎません。
鍵盤に置き換えてもそれは同じ。
でも違うんだ、音階は立体、空間なんだ。
ドレミファソラシドは、「ド」が次の「ド」に向かうための音の並びなのではなくて、
「ド」が「ソ」に向かう道、「ソ」が「ド」に帰る道なのだ・・・

「属音」という言葉からはそんなイメージは沸いてこないのです。




↓例えばこの本。

12.jpg

イギリスの楽典本ですが、面白いですよ~(和訳もあるらしいです)
日本では、四分音符を1拍、二分音符を2拍と数えたりするじゃないですか。
ここでは、
四分音符は「hit」(小太鼓のパシッ!)
二分音符は「stroke」(大太鼓のド~ン!)
と数えます。



この国にも、読むだけでいろんな想像力をかきたてるような、面白い理論書があるといいのにな。











nice!(11)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 11

コメント 8

obasan

確かに・・・
12音律はそれぞれの人の言葉ですね
by obasan (2011-12-07 08:50) 

glennmie

obasanさん、コメントありがとうございます。

そうか・・・
なるほど、そうなんですね。
言霊が宿る言葉こそ、音楽のオーラに触れられるのかもしれません。
ただ便宜上翻訳されただけの理論書には、それがないんですね。

12の音は言霊・・・
どうもありがとうございました!
by glennmie (2011-12-07 11:03) 

Mineosaurus

日本のは音楽学なのです。昔無人島に持ってゆく一冊という特集が音楽専門誌であって、1番が旧約聖書2番がマタイ受難曲であったと記憶しています。2番目なんか無人島での毎日をうっちゃるのに最適ですわね。
by Mineosaurus (2011-12-07 21:34) 

glennmie

Mineosaurusさん、コメントありがとうございます。

日本人のアンケートなのでしょうか、どちらも面白いですね。
マタイは持って行きたいかもしれませんね~。
でも、受難劇はちょっとヘヴィ~です。
孤島で落ち込む・・・
ちなみに、Gouldは、シュトラウスの「カプリッチョ」を持って行きたいと言っていましたよ。
そのシュトラウスは、ヘンデルの「ラルゴ」を持って行くんだそうです。



by glennmie (2011-12-07 22:40) 

Shin

はじめまして。こんにちは。
Gouldの検索でやってきました。

昔、「輝ける青春」という長~い映画を見たとき
政治犯の奥さんにバッハの楽譜を差し入れるシーンがあって
心にしみました。

僕は楽譜も読めないのですけれどね。。

by Shin (2011-12-07 23:43) 

glennmie

はじめまして、Shinさん、コメントありがとうございます。

なんか、素敵な映画のようですね^^
そういう場面にBachって、なんとなく象徴的な気がします。

私、このブログをはじめるまでは、自分のピアノとBachの楽譜とGouldのCDだけあればそれでいいや、とかなり閉鎖的な「輝かない青春(←?)」を送っていました。
私の拙い記事に、沢山の方々がありがたいアドバイスや激励のコメントをつけてくださって、最近ちょっと世界が広くなった気がしています。
こんなささやかな私の人生にもBachの音楽、というのもなんか象徴的でしょ?



by glennmie (2011-12-08 01:01) 

nina

はじめまして。 二年前の記事に失礼します。
何度も楽典にトライしてみるものの日本の音楽書のかたさ、
翻訳された言葉のあまりのしかめっ面にどうしても馴染めず、
英語で勉強したいと思っていたところ ここ迄たどり着きました。
楽典マニア、羨ましい限りです。
本来は奥の深い学問なのだろうなという希望を捨てきれないでいます。
もし英語、あるいは数学の方面からアプローチされたお勧めの書物がありましたら、教えていただけると幸いです。
ぱっと調べたところPractical Theory Complete という本が
有名なようで、気になっています。

by nina (2013-07-10 17:11) 

glennmie

ninaさん、はじめまして。コメントどうもありがとうございます。

世の中、とても沢山の本が出てますけれど、なかなかピンとくる本に出合えませんね。
音楽用語の日本語訳がいまいち好きになれないということも大きな要因かと思います。だけど、やはり必要なので使っていますけど。
上に挙げた英国王立音楽院の本はとても良いと思いますよ。楽しいです。
でも、楽典は西洋音楽の基本的なルールを説明してくれるだけの辞典のような本だと思うので、やはり実際の音楽に接しながら初めて役に立ってくれるのではないでしょうか。
by glennmie (2013-07-11 03:15) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

Who is Mozart?トリスターノ、再び ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。