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エネスク・・・ピアノのための組曲第2番 Op.10 [音楽雑感]








27歳のGouldの映像です。
作曲家志望の彼に、「新しい音は見つかったの?」と尋ねると、
「見つからなくて悲観的になってるんだ。
調性音楽はもう終わったと言われているし、自分が求めている音は70年も前の時代遅れだと言われてしまう・・・それではいけないのだろうか?
例えば、誰かの作風で曲を書くというのはいけないのだろうか・・・」
と答えています。
構わないけれど、ある時はシューマン風、ある時はブラームス風なんて作曲科の学生みたいだよ、といわれていますね。
自分自身の方向性を定めないといけないよ、と言われると、それがなくて困っていると。



結局、Gouldが作曲家になれなかった最大の理由がここにあるのではないかな。



全く個人的な意見なのですが、
西洋音楽の歴史とは、個々の作曲家達の新しい価値観の提示の積み重ね、
これまでの常識を打ち破り、今までに見ることの出来なかった新しい地平を見んとする情熱や試みの積み重ねによって支えられてきたものだと思います。

それまでの音楽の常識や基礎や方法論を否定して、次の世界に進んでいこうという気概。
そうした気概がないのであれば、たとえ彼が作曲家になったとしてもせいぜい映画音楽作家か、べらぼうに演奏の達者なリチャード・クレイダーマンで終わっていたでしょうね。




作曲が好きなことと、作曲家になるということは同じことではない。
彼が天性のピアニストであったように、生まれながらに天性の作曲家である人もいる。


ルーマニアの作曲家、ジョルジェ・エネスクの作品をただ今勉強中です。
ピアノのための組曲No.2・・・これね、知れば知るほど凄い作品だと思います。
エネスクが20歳の時の作品。
時代だ、作風だ、方法論だ・・・そんなものを、なんと軽やかに飛び越えてこの若者は地上に降り立ったものかと・・・そんな感じ。



Mineosaurusさんの記事でこの曲に出会って一目惚れしてしまい、私も弾いてみたいなぁと思ったのですが。
楽譜を手にするまで一悶着あってちょっと可笑しかった。
エネスクのピアノ譜はあまり出回っていなくて、この曲に関してはフランスのENOCH社から出ているものしかみつかりませんでした。
よく利用する無料楽譜サイトにこの出版社の楽譜が出ていたので、ラッキー!とダウンロードしたんです。
何十枚もあってプリンターのインクが切れて買いに走りましたよlittle_panda.gif
で、やっと落ち着いて曲の譜読み・・・・・

なんかね、変なんですよ。
音が。
これでいいのか~~??という音の羅列で音痴になりそう。

で、あわててCDを買いに走りましたよlittle_panda.gif
で、やっと落ち着いて耳コピに・・・・


それで発覚したのですが、この楽譜、臨時記号が違っているんです。あっちもこっちも、それも大量に。
良く見るとナチュラル記号をシャープに書き換えたりその逆もあって・・・いたずら書き?
写真.JPG
写真1.JPG

この楽譜にはGrazの音楽大学のスタンプが押してあるので図書館の楽譜だと思うのですが、学生のいたずらなのかな???
ピンクのペンで訂正しまくったのですが、時間と労力の無駄だ・・・
で、あわてて楽譜を買いに走りましたよlittle_panda.gif







プリンター・インクにCDに楽譜に・・・貧乏人を殺す気か。[むかっ(怒り)]





そしてそして、ようやっと曲の分析に。
片手にペン、片手にガリガリくんを持って日夜取り組んでいます。
アナリーゼ講座の先生に教えていただいた数々のノウハウを駆使して。
(先生!私、頑張ってますから!)


私にとって最大のキーポイントは、この曲がニ長調だということです。
ラテン語で神様のことを「Deus」と言いますよね。
この頭文字をとって、バロック期の音楽でニ長調は神様を賛美する曲によく使われています。
有名なところではBachのあの名曲、


何度も繰り返して響き渡る「D」の音と祝祭的な晴れやかな響き。


エネスクのこの組曲が「古風な形式による」と銘打っているからには、彼も同様のイメージで曲を書いているものと思われます。
チューブラー・ベルで駆け下りてくるようなニ長調のスケールが華やかで、大聖堂の鐘がガラン・ゴロンと、
「おめでと~~!!」と祝ってくれているかのようです。
この曲はパリ音楽院の作曲の試験のために準備したという説があるようですが、だとしたら先に自分で「合格、おめでと~!神様、ありがとう!」と言っているのかしら?(笑)


この楽譜は、ペダルの指定がとても詳細です。
時々ふってある指番号やフレージングも意味深です。
これは作曲家の指示なのでしょうか。
生前に出版されていることから、たぶんそうなのでしょう。
ハーモニーを分析しているとこの曲の力学というか、この曲に秘められた世界観が見えてくるようで本当に面白いです。
エネスク自身による演奏も残っています。
それを聴きながら楽譜を眺めていると、さらに興味深いことがいくつも発見できました。



まだまだ理解は浅いのですが、
そろそろ鍵盤に向かって練習をはじめようかなと思っています。
















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コメント 4

Mineosaurus

難しいことですが、分析して深めたこと、理解したこといざ、鍵盤に向かうときはぜーんぶ忘れて下さいね。思考が感性を止めないように。どっちにあなたがいるかというと、ボクは感性にいると思っています。
by Mineosaurus (2013-05-30 23:27) 

glennmie

Mineosaurusさん、とてもありがたいコメントをありがとうございます!

作品に共感するというか、理解を深めることで自分の感覚に自信を持ちたいというのがすごくあるんです。
自分の感じるものを信じられない自分がいるという責任感のなさ、みたいなものがいつもいやで、克服したいと思っているのですが。
試行錯誤しながら、でも最終的には好きなように弾きたいという思いしか残らない気もして難しいところです。
部屋で一人で弾いている時はのびのびできるんですけどねぇ・・・

by glennmie (2013-05-31 01:18) 

Mineosaurus

時間が随分ずれましたが、プリンター・インクでは私もあまり良い思いはしていないですね。以前はDellの複合を使用していましたが、インクは注文後に製造するので届くのが遅いのです。しかも高い!ところが少し多めにストックしておこうと注文し、注文した品物が発送準備が出来た頃に、本体がぶっ壊れたのですね。必要なので慌てて本体を買い換えました。で、その2日後箱詰めにインクが届いたのでした。…まだ、部屋に未開封のまま放置してあります。
by Mineosaurus (2013-06-19 07:46) 

glennmie

Mineosaurusさん、

ウチはhpなのですが、純正インクはやはり高いです。
ただ、10年以上使っていますが壊れることもなく、インク・カートリッジも型落ちせず未だに購入できています。
長い目で見ると良いのかなぁとも思いますが、
今、シンプルなプリンターだとインク代ととんとんの値段で買えてしまう・・・
まだ壊れてもいないのに買い換えるのもなんだか。
インクがきれるたびに悩んでいます。

by glennmie (2013-06-19 20:02) 

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