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La Danse Macabre_死の舞踏 [Gould]

モーリス・ラヴェルの舞踏詩『ラ・ヴァルス』
ラヴェルは初版の楽譜に次のような標題を添えています。
「渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女がかすかに浮かび上がって来よう。雲が次第に晴れ上がる。と、A部において、渦巻く群集で埋め尽くされたダンス会場が現れ、その光景が少しずつ描かれていく。B部のフォルティッシモでシャンデリアの光がさんざめく。1855年ごろのオーストリア宮廷が舞台である。」


ラヴェルは第一次世界大戦に従軍しています。
その時の写真を見たことがありますが、軍服が全く板についていなくて何となく滑稽で哀しい姿でした。
砲弾の下をかいくぐって資材を運ぶトラック輸送兵としての辛い経験は彼に重いストレス障害をもたらし、
またその頃、彼は最愛のお母さんを亡くしています。
辛く悲しい時期、この作品はそんな頃に書かれています。


ウィーンの華麗な舞踏会を描いているはずのこの曲は、しかし、退廃的で暗い影に覆われています。
不安定な転調を繰り返し、軽やかなワルツのステップが徐々に乱れ崩壊し、突然終止します。
華やかな貴族社会の終焉を予告するような不気味なエンディング。
まさに、このワルツは死の舞踏なのですね。



Gouldの演奏がとても面白い。
ラヴェル自身のピアノ版編曲に、さらにGouldが手を加えたGould校訂版「ラ・ヴァルス」です。




おどろおどろしい無調の響きから立ち上ってくる死の舞踏。
鋭いリズム感から紡ぎだされるワルツのリズムは、けれども決してワルツを歌わず、
幻想的な色彩感をも排除して徹底してクールです。
とてもカッコイイ。







この曲はもともと彼の「シルバー・ジュビリー・アルバム」の中の「グレン・グールド・ファンタジー」に収められているものです。
このアルバムは強烈ですよ。(笑)

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彼のデビュー25周年記念盤なのですが、
タイトルの「シルバー・ジュビリー」はホロヴィッツの「ゴールデン・ジュビリー」に対する当て付けらしい。
「グレン・グールド・ファンタジー」の中ではホロヴィッツが12年のブランクを経てステージに返り咲いたライヴ「ヒストリック・リターン」に当て付けて、Gouldもステージに返り咲く「ヒステリック・リターン」の模様が繰り広げられます。
ステージの場所は北極の油田採掘場。
ブリザードがビュービュー吹き荒れる中彼は「ラ・ヴァルス」を演奏するのです。
途中大波に自慢のイスを流され、それでも中断することなく膝をついて演奏を続ける彼の雄姿。
演奏が終わると観客のアザラシたちが、「モワッ!モワ~ッ!!」と声援を送りながら尾ひれを叩いて拍手をするんです。
「サンキュー、サンキュー。」と答える嬉しそうなGouldには爆笑しましたよ。





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